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イギリス人記者によるノエスタでのヴィッセル神戸の試合観戦レポート


きのうイギリスのスポーツサイト「ザ・スポーツマン」に、イギリス人記者によるヴィッセル神戸の観戦レポートが掲載されていたので翻訳してご紹介します。
これは今年の1月に掲載されたものを再掲したものらしいのですが、色々と興味深かったのでおすすめです。

ジェームス・ブラウン記者(@jamesjamesbrown)が観戦したのは、昨年11月にノエビアスタジアムで行なわれたJ1第32節セレッソ大阪戦です。




 

 

[The Sportsman]James Brown In Japan: Around The City That Turned To Football In Its Time Of Need
https://www.thesportsman.com/features/james-brown-in-japan-around-the-city-that-turned-to-football-in-its-time-of-need1111
大阪湾に面した震災記念公園には清々しい空気に包まれています。サッカー観戦には慣れていても昨夜の食べすぎ飲みすぎで不安を抱える私たちにとって、試合当日とは思えない爽やかさです。朝の潮の流れは、係留されている作業船を持ち上げながら流れ込んできます。1995年1月17日の壊滅的な被害で亡くなった人々を追悼するために建てられた巨大な彫刻や噴水、塔の前を通り過ぎると、そよ風が流れてきました。

あれから25年経った今、聞こえてくるのはコンクリートの上を滑るスケートボードの音だけです。ここにはサッカーの形跡はありませんが、地元のクラブ、ヴィッセル神戸と震災は、4万人の市民の命が失われたその日がチームが初練習を行うはずだった日だったことが重なり、深く結びついて消えることはありません。

サッカークラブとして、おそらく史上最悪のスタートといえます。それは平時なら最下位のチームに0-2で負けてしまう程度のことですが、実際は、神戸の作業用港は引き裂かれ、クレーンは倒壊し、コンクリートの橋脚は崩壊し、高速道路はおもちゃを壊すように崩れ落ち、いたるところで火災が発生しました。何が起こったのかという恐怖に直面し、大抵の新規企業なら、ただただ引きこもっていたかもしれません。ヴィッセル神戸にとってもそれは選択肢のひとつでしたが、新しく立ち上げたばかりのクラブをスポンサードする企業の多くが大打撃を受けたことを考えると、彼らは自分たちで資金を集めるため奔走しなければなりませんでした。

ヴィッセル神戸の練習場は破壊されました。当時のスチュアート・バクスター監督は海外選手のスカウトのため日本を離れていましたが、選手、スタッフ、サポーターが愛する人を失ったという恐ろしい現実に心を痛めながらも、遠くからこの事態を見守ることしかできませんでした。しかし、クラブは屈することなく、すぐに近くの空きオフィススペースのある工場に事務所を移転し、彼らはそこの駐車場でトレーニングを始めました。 

このクラブの動きは市民を勇気づけました。多くの近隣住民が被災して悲しんでいた中でも、結成されたばかりのチームの練習見学に訪れ、舗装された地面の上でボールを蹴ってトレーニングに励む選手の姿を見ていました。また、クラブは水や食料などを配りましたが、地域社会はその恩を忘れることはありませんでした。特別な絆が生まれ、街は再建に励み、神戸のサッカーチームと野球チームは復興の象徴となりました。

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新しい世紀を迎え、スタジアムの外観も新しくなったヴィッセル神戸は、今でも熱狂的な支持を受けていますが、クラブは大きく様変わりしました。好奇心旺盛なサッカー旅行者にとっては、訪れる価値のある場所と言えるでしょう。欧州のチャンピオンズリーグで活躍したベテラン選手を擁し、昨年のラグビーワールドカップでは本拠地のノエビアスタジアムで試合を開催しました。地元出身でグローバルな視野を持つ、日本を代表するビジネスマンの一人である三木谷浩史氏がオーナーを務めています。

三木谷氏の会社である楽天はよく知られています。バルセロナのシャツをスポンサーにしているマルチメディア企業で、ジェラルド・ピケと提携し、三木谷氏はテニスのデビスカップのグローバルパートナーになりました。ヴィッセル神戸でも元バルセロナの選手を獲得するのが好きなようで、私の関心を引いたのはこの点でした。

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ヴィッセル神戸では、いまでも信じられないようなパスを出すアンドレス・イニエスタ、キャリアに終止符を打つダビド・ビジャ、ベンチに控えるトーマス・フェルマーレン、ピッチの中央で奮闘している若いセルジ・サンペールなどがいます。彼は元バルセロナの選手の中では最もキャリアのない選手ですが、イニエスタやビジャに促されてやってきました。元アーセナルのウインガーでワールドカップ優勝者のルーカス・ポドルスキを加えれば、多くがキャリア晩年とはいえ、かなりのタレントを擁していることになります。

このような才能のある選手が集まれば、ヴィッセル神戸がJリーグの上位にいると思うかもしれませんが、実際はそうではありません。11月下旬、私が訪問したときには違いました。実際、今日は地元のライバルであるセレッソ大阪を恨めしく見上げざるをえませんでした(昨季のセレッソは5位でヴィッセルは8位)。三宮のパブ「ハーバータヴァン」で後ろにいた元リバプールファンのサイモンが言います。「ヴィッセルは選手を集めることに長けているが、今はまずチームを作る必要がある。いつか彼らは監督を見直さなければならないだろう」

神戸・大阪ダービーの日には、さわやかな青空が広がり、人々は楽観的な気持ちで家を飛び出し、スタジアムに向かっていきます。晴天ならゴールを思い出すのも簡単でしょう。

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最寄り駅の近くでは、選手の名前と番号が書かれたビスケットのパックが売られています。街頭には試合告知のための三角旗が、スター選手の写真とともにぶら下がっています。地下鉄に乗ると、両チームのファンが何の事件もいさかいもなく仲良く交流していました。地下道を出てスタジアムへ向かうと、世界中のサッカーシャツのレプリカが売られている屋台がありました。隣の寿司屋の外には、ヴィッセルのユニフォームと青い帽子をかぶった老人が立っていて、腹をすかせた人たちにロールケーキを販売しようと熱心に案内していました(※実際は巻き寿司で、スタジアム近くの寿司屋「寿し秀」さんだそうです)。イギリスで最悪かもしれないストーク・シティのスタジアム周辺で食べるよりもきっと美味しいでしょう。ノエビアスタジアムの近くにはたくさんの案内用のテントや看板があり、清潔でとても広々としています。彼らは明らかにイギリスではなくドイツから影響を受けています。

スタジアムの中はキックオフ前からとても賑やかな雰囲気でした。スタジアムの両端は互いのチームのサポーターが陣取り、その99%がユニフォームを着用しています。セレッソ大阪は濃いピンク、ヴィッセル神戸はクリムゾンレッド。彼らは同じ系統の色で戦っていました。ホーム側スタンドの壁には、神戸の強烈な横断幕が掲げられています。‘Keep on fighting in enemy land’ ‘The 11 Stones’ ‘We will follow, Love over land and sea’ ‘Now and forever in the name of Kobe’ ‘Punx de Kobe’ ‘Black lions’.

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メガホンを持った青い服を着た男が執拗なドラミングとチャントを煽っているが、ドラムのアップビートでスピーディーなリズムは、レディングFCやシェフィールド・ウェンズデイFCの試合でソロ・ドラマーがするような耳障りなものではない。ヴィッセル神戸のファンは、ビートルズの「イエローサブマリン」のアレンジバージョンを完璧に演奏するために多くの時間を費やしています。

試合が始まると応援や歓声が一度も止まることはありません。事実です。とてつもない雰囲気を作り出しているのですが、もうそろそろ止めないか?と思うところまで来てしまいます。彼らはとても統制の取れたサポーターで、それはまるで45分間のメドレーを2度繰り返すメタリカのライブに来ているようなものです。そして、それはアウェー側からも同様の熱気で反響してきます。この騒音の中で選手たちがどうやって互いの声を聞き分けているのか知ったことではないのですが、もしかするとジェスチャーなどでコミュニケーションをとっているのかもしれません。




開閉式の屋根の下で展開されるこの試合は、とてもスピーディでエキサイティングです。数年前にニューヨークにビジャとピルロを観に行ったときよりもはるかに高いレベルでしょう。イニエスタは時折、短い壁パスや1/4の長さのスルーパスを通し大阪の守備をこじ開けます。それは芸術家の仕事を見ているようなものでした。彼はボールを受けると味方を確認し、足を前に動かして相手の行き先を誘導し、チームメイトと反対の方向にボールを滑らせます。私たちはこれまでにも同じ動きをテレビで視てきましたが、素晴らしい選手のキャリアの終盤にそれを見るのはまた別のことです。

ヴィッセル神戸の選手がゴールに近づくと、セレッソ大阪のサポーターはまるで悪霊を追い払うかのように大きな旗を掲げます。しかし効き目はなく、大阪のキーパーがピンチを凌ぐ前に神戸は再び絶望の絶叫を引き出すべく攻撃を仕掛けます。

試合は2018年に降格したFC岐阜から加入したヴィッセル神戸のウインガー・古橋によって決着がつけられました。彼の素晴らしいカットインに相手ディフェンダーはバランスを崩し、対角に放たれたシュートがゴールネットを突き刺しました。両サイドでプレーする日本人選手はポドルスキらに頼るわけでもなく、とても新鮮で、野性的なプレーを見せました。それでも試合は1-0で終了します。ひとつ奇妙に感じたのは、髪を金髪に染めて西洋風に見せる選手が多かったことです。ベッカムの影響がまだ残っているのでしょうか。

試合終了後はとても儀式的で、両チームの選手がセンターサークルに並んで握手をし、ヴィッセル神戸の選手がスタジアムの隅々を回ってスタンドへお辞儀をし、手を振ります。これは本当にただの試合イベントというよりパフォーマンスのように感じさせてくれます。

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ヴィッセル神戸の選手がホーム側スタンド前に集まると、それぞれのファンが選手の写真の入ったフラッグを掲げ、選手たちは肩を組んで歌います。そして、サポーターたちもチャントではなく、彼らに歌を贈ります。アウェーのセレッソ大阪のサポーターたちでさえ、ピッチの外ではヴィッセル神戸の選手に拍手を送りました。マンオブザマッチは胸に「D」の文字のスポンサーから表彰されました(※スカルプDのこと?)

選手が去った後もサポーターたちはスタンドに残って歌い続け、身体を揺さぶり、飛び跳ねて一体となっています。それは震災の悲劇から生まれた愛でしょう。そしてクリスマスを経て、2020年の元日に天皇杯決勝で鹿島アントラーズを2-0で下すまで、チームを高めていきました。東京オリンピックのために建設された新国立競技場での初戦。震災から25年、彼らはついにクラブ初めてのタイトルを獲得したのです。

ヴィッセル神戸が諦めなかったのは、正しいことでした。

89 コメント

  1. 寿司屋でロールケーキは売ってない。多分「胃にえぇスタミナロール」ってお寿司だろ。

  2. >イギリスで最悪かもしれないストーク・シティのスタジアム周辺で食べるよりもきっと美味しいでしょう。

    イギリス飯はネットで言われてる程不味くないよ、というのはやはり嘘なのか?
    それともストークシティのスタジアム周辺がこの世の地獄なのか?

  3. 等々力ならもっといい体験させてあげられたのに

  4. メタリカワロタ
    イングランドだと要所要所で歌う感じ?

  5. 途中辛辣なイギリス人らしい皮肉が続いたと思ったら最後はいい感じに締めてた

  6. ※1
    何その地獄のようなネーミング…

  7. 胸に「D」の文字のスポンサー、リポビタンDのことではないかな

  8. ちょいちょい入る風刺や皮肉がいかにもブリテン。書いてて楽しそうやな。

  9. ※1
    これは命名テグかはややですか?

    ググったら美味しそう、遠征解禁されたら寄ってみたい

  10. ヒルズボロからこっち立って応援なんて出来ないから尚更新鮮に映ったのかもしれないな

  11. いやぁ、こういう日記風のレポートもいいものですな
    内容がスッと入ってくる

  12. ※3
    あんな糞みたいなスタジアムに行ったところで何も感じないと思うけど

  13. >ヴィッセルは選手を集めることに長けているが、今はまずチームを作る必要がある。

    近いようなことを川崎vs柏の記事のコメント欄に書き込んでいた人も居たね。

    いい選手集めとけば無双できるわけではない。
    各々がチームの一部として機能しなければならない。
    つまり、チームとして結集出来なければいけない。
    これはJ1にいてもJ2にいてもJ3にいてもJFLにいても同じこと。

    その積み重ねをやれるようになれば、常に人材が入れ替わってもヴィッセルはJ1で常に上位争い出来るはずだ。
    だから今は目の前の勝敗や周囲からの横槍に関係なく、まずは理想の土台を築いていってほしい。

    前にNumberでヴィッセル特集が掲載されてた時、そのインタビューでイニエスタが自分がヴィッセルに来た理由が「ヴィッセルのプロジェクトのため」だと言っていた。
    プロジェクトとはトップチームだけでなく、下部組織も一緒になってクラブ全体を進化させるための。
    他サポとしても、進化したと言えるその瞬間を是非観たい・・・観たいから足を止めずに頑張ってほしい。

  14. ※12
    スタジアムが糞だったとしてもその弱点を補おうとする川崎の工夫は凄いと思うぞ。

  15. ※14
    サッカースタジアムで行われるその「奇妙な」イベントをイギリス人記者がどう表現するか見てみたい気がする

  16. 自身の体験記っぽいのにどことなく叙述的で好き

  17. この露店で売ってるユニって正規品ではないよね…?
    世界共通なんだろうかこういうのは

  18. ひと昔前の味スタなら(飯的に)このイギリス野郎に地獄をみせつけてやったのによ
    「まともな食べ物がビールしか無い!」と嘆いたことだろう。

  19. 阪神大震災っって4万人も亡くなったっけ?

  20. ※3
    最寄り駅からスタジアムへの道のレポートもあるから、
    同じ文量で依頼したら行き帰りに起こった迷宮での出来事をユーモアたっぷりで書かれて終わりそう

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